新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の今、知っておきたい医療機関の機能と役割、社会制度の捉え方(Part3)
皆様こんにちは。今回も、ソーシャルワーカーの視点からみる、新型コロナウイルス感染症を含む、感染症対応を行う医療機関の機能と役割、社会制度の捉え方についてご説明させていただきました。前回に引き続き、感染症関連の治療を対応する病床のに中から「結核病床」について触れていきたいと思います。
<「結核病床」とは>
・感染症法で2類感染症に該当する「結核」の治療を専門的に行う病床です。
・結核の指定医療機関は、平成31年4月1日現在で184医療機関(3,502床)(※3)
・結核に罹患している方はもちろん、結核菌を他者へ感染させてしまう可能性が高い人や、結核治療に伴う副作用などにより入院が必要な方を対象に治療を行います。
・この治療による医療費には「感染症医療費助成制度」という制度を活用することが出来ます。
・入院の勧告や措置をしなければいけない場合の患者に対しての医療費は、各種医療保険を適応した上で、結核の治療に必要な費用の自己負担分を全額公費で負担します。(世帯の収入状態にあわせて一部自己負担額が発生する場合があります)
・また結核治療を受けようとする人が、結核の指定医療機関で適切な医療を受ける為の治療費用については、都道府県がその費用の95%を公費で負担します。
・これらの申請手続きはお住いの地域の保健所になります。
(※3)指定医療機関数に関する情報は、「厚生労働省 第二種感染症指定医療機関の指定状況(平成31年4月1日現在)」を参照(https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou15/02-02-01.html)」
<新型コロナウイルス感染症については、「第二類感染症と同様の措置」が取れるように時限法が制定されています>
新型コロナウイルス感染症の脅威がある中、政府は2020年1月28日に、「厚生労働省令第九号」により、新型コロナウイルス感染症について、感染症法に基づく「指定感染症(二類感染症相当)」と、検疫法の「検疫感染症」に指定する政令が出されました。これは、今後の新型コロナウイルス感染症の更なる拡大を防ぎ、迅速な対応をするために、「二類感染症相当」の「対応策」が利用出来るようにする為の措置であり、現時点では1年限りの時限法になっています。(延長もあり得ます)
社会制度上、新型コロナウイルス感染症を指定感染症・検疫感染症に指定した場合、具体的には「患者に対する入院措置や公費による適切な医療の提供」が既存の医療体制で行う事ができ、「医師による迅速な届出による患者の把握」を行い、「患者発生時の積極的疫学調査」をスムーズに行う事に繋がります。
上記の法整備を行わないと、公衆衛生の観点から国民全体に医療資源を活用できない状況にあります。その為法整備を含む政府の決定がなされることは、国民を守る為の動きとしては非常に大切です。しかし、まだまだ私たちの暮らしに実感が持てるほどには至っていないのが現状です。
<感染症は目に見えない怖さがありますが、情報を落ち着いて理解し、適切な医療資源に相談しましょう>
感染症対策において現時点で私たちが出来る事は、頻繁にニュースで流れているように一人一人が今出来る感染症予防対策(スタンダードプリコーション)や、咳エチケット(社会人としてのマナー)を行うことだと思います。そして、症状が現れた際には、政府の対応窓口を始め、症状に合わせた対応が出来る医療機関にしっかりと相談をしていきましょう。
また、新型コロナウイルス感染症関連では、今後も更なる対応と支援に繋がる内容が政府から発表されると思います。目に見えない恐怖から過度に不安になり、本来対応が出来ない医療機関に相談して断られた場合、ますます不安と混乱を助長することに繋がってしまいます。そうならない為にも、既存の医療資源の特徴を理解しつつ、落ち着いて新しい情報を整理しましょう。そして、自衛をしながら適切なタイミングに適切な場所へ相談できるような準備をしておくことが大切だと考えます。
適正に感染症を怖がることは、冷静でなければ難しくなってしまいます。今後新しく出される様々な情報を自身が落ち着いて理解することが出来れば、漠然とした怖さを少しでも明らかに出来ると思います。そして、不必要な買い占めなどもしなくてすむ「少しの余裕」も生まれるかと思います。自分自身が必要な時に医療サービスが利用できない事態を防ぐ為にも、「適切な理解」が、過度な不安を抑え、「適切な社会資源の活用」にも繋がることを是非心にとめていただきたいと思います。
全3回に渡って書かせていただきました。以上が、ソーシャルワーカーの視点からみる、新型コロナウイルス感染症を含む、感染症に関わる医療機関の機能と役割、社会制度の捉え方でした。