「生き辛さを支える」ソーシャルワーカーの相談室

自分の気付きと振り返り(79)「相手が言い返すのは、脅威と感じられている証拠」

 
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現在は医療機関で医療ソーシャルワーカーとして10年以上働いていおります。相談援助職の国家資格である「社会福祉士」の資格を持ち、介護保険制度のプロである「介護支援専門員」の資格も生かし、医療と福祉の両面で、生活すること、生きること、暮らすことのお手伝いを行っています。 中々人に言い辛い「お金にまつわること」を始めとすることや「社会保障制度」の活用の仕方や、「介護サービスのこと」「病院の選び方」に関わるアドバイスが可能です。 また「医師・看護師とのコミュニケーションの取り方」で中々自分の言いたいことが伝わらない一方通行な言われ方・やり取りをした経験はありませんか?医療職種の考え方・言葉の中に何が含まれているのか、紐解くお手伝いも得意です。 様々な公的制度や対人コミュニケーションを円滑にするポイントを探し、暮らしのお手伝いになれる「相談員」としてご活用ください。 また、気軽に趣味の投稿も備忘録として増やしていきます。

日頃の仕事での気付きや、本やメディアなどの言葉で自分の心に留まったもの、自分の振り返りの言葉などを取り上げて、備忘録的に書き留めます。

今回の言葉は「相手が言い返すのは、脅威と感じられている証拠」というものです。

私達相談援助職は、仕事上様々な方とやり取りをしていきます。ある時とある医師(Aさん)とやりとりをする際に、感じの悪さを覚えたケースがありました。やり取りの一場面を下記に振り返ってみます。

【Aさんと私のやり取り】
私:〇〇さんについてご相談です。□□施設から日常生活の注意点について直接やりとりが出来る機会を作ってもらえないかと話が出ています。施設としては〇〇さんの状態をお引き受けするのは初めてなので、お時間を頂く事は可能でしょうか?

A:何でそんなことをしないといけないんですか。私の指示は全てリハビリスタッフへ伝わってるので。

私:そうですか…それではリハビリスタッフと施設側で直接やり取りが出来る場面を設定し、日常生活の注意点などを確認するようにしますね。退院後、外来での定期通院は必要でしょうか?

A:外来に来なくていい訳がないでしょう。絶対来てもらいますよ。

私:では退院の際に、次回受診日の予約をお願いします。入院中に出ていた処方薬については他科のものが殆どでしたが、先生の外来通院時に、現在と同じように先生で一括して処方薬を出して頂く事は可能ですか?

A:私は薬は出しません。外来で対応するだけです。薬は他でもらってください。

私:なるほど、分かりました。では他科は今まで通りの場所で受診頂き、それとは別に外来には通ってもらう、という事ですね。

A:はい。当然です。

私:では失礼します。

逐語式で振り返ってみました。まず、私がこのやりとりを終えたその当時の気持ちについて振り返ります。

【やりとり当時の私の気持ち】
・感じ悪い。嫌な対応で、嫌い。

・自分の専門の事しか考えない。何様なんだ。(怒り)

 

次は、文字に起こしたそのやりとりを、客観的に見た私の気持ちを列記します。

【文字に起こしたそのやりとりを客観的に見た私の気持ち】

・Aさんの冒頭の「拒否」を感じて、私の怒りのスイッチが入っている状態のやり取りになっている。

・私の「そうですか」「なるほど」「分かりました」という言葉は、言葉の意味通りではなく、私も「拒否」を表してる。

・言葉上はこのやり取りを破綻させない様に、自分が確認したい事や形にしたい物についてのみ、Aさんに話を振り、「YESかNO」のどちらの方向か確認するだけの形になっている。

・「何でそんなことをしないといけないんですか」「絶対来てもらいますよ」「当然です」というAさんの言葉には、トゲがあるなと感じる。

 

今回の振り返りの中で、「なぜAさんの言葉の端々にはトゲがあるのか?」という部分にポイント絞って考えてみます。

Aさんの普段の言い方や振る舞いを見ると、特徴が見えてきました。

【Aさんの特徴】
・自身の専門領域以外の事には興味は無い。(価値観)

・この職場は腰かけであり、数年後に退職が見込まれている。(価値観)

・他のスタッフへコミュニケーションを取りに行く事をしていない。(行動)

・自分からの指示については細かく口頭で伝えている。(行動)

・コミュニケーション(双方向)ではなく、指示(一方向)が多い(行動)

・スタッフからの質問については、一度伝えた事と類似の質問に対しては「以前に伝えた」と会話を切る傾向がある。(行動)

上記の価値観と行動を踏まえ、Aさんをアセスメントしてみます。

【現在のAさんをアセスメント】
・自身の価値観としては、専門領域以外に興味は無い事と併せて、スタッフの質(同じことを何度も聞く等)も相まって、双方向のやり取りに煩わしさを感じさせている環境にある。

・各種の一方向の行動を強化させているのは、Aさん自身が、現在コミュニケーションを取る事にメリットを感じていない状況にあるため。

・相談援助職(福祉職)がAさんに対して、一方向で終わらせない様にコミュニケーションを図るのは、現在のAさんの環境からは異質に感じる状況。

・相談援助職の話の持っていき方が、一方向で終わらせられないように話を切り出していく対応には、ある種の「言い返された」感覚が出てくるため、前段で話題にした「言葉の端々にはトゲがある」言い方になりがちになる。

 

今後もAさんとのやりとりは続いていきます。そして、Aさんの意図が聞き出せるように相談援助職としては「一方向」をお互いに向けるだけではなく、ちゃんと「双方向」となるコミュニケーションを図ることに注力は必要だと振り返りました。

それでも私個人はAさんのトゲに傷付いた事は事実です。そんな自分に声をかけてあげられるとすれば「相手が言い返すのは、脅威と感じられている証拠」という言葉です。

トゲにトゲで返すと、人間の本能としては自分も相手も感情で反応しますので、他人は変えられないと考え、自分が生きやすく解釈する事も必要だと思いました。

確かにAさんとのやりとりで消耗した感覚はあります。消耗しているという事は、逃げずに自分にも相手にも戦っているという事だとも言えます。

そう考えると、私はこれからもAさんとちゃんと戦えるなと思います。そして、今後このやり取りの中で私自身が「戦う」から「向き合う」と素直に言えるようにアセスメントと言語化をしていきたいと思います。

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現在は医療機関で医療ソーシャルワーカーとして10年以上働いていおります。相談援助職の国家資格である「社会福祉士」の資格を持ち、介護保険制度のプロである「介護支援専門員」の資格も生かし、医療と福祉の両面で、生活すること、生きること、暮らすことのお手伝いを行っています。 中々人に言い辛い「お金にまつわること」を始めとすることや「社会保障制度」の活用の仕方や、「介護サービスのこと」「病院の選び方」に関わるアドバイスが可能です。 また「医師・看護師とのコミュニケーションの取り方」で中々自分の言いたいことが伝わらない一方通行な言われ方・やり取りをした経験はありませんか?医療職種の考え方・言葉の中に何が含まれているのか、紐解くお手伝いも得意です。 様々な公的制度や対人コミュニケーションを円滑にするポイントを探し、暮らしのお手伝いになれる「相談員」としてご活用ください。 また、気軽に趣味の投稿も備忘録として増やしていきます。

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