「社会保障制度」を身近に感じてみませんか?「社会保険」の中から「雇用保険制度」を簡単に解説します。(Part2)
皆様こんにちは。今までのブログ記事でも「社会保障制度」における4つの柱について触れてまいりましたが、今回もその1つの柱である「社会保険」の中から、中身の1つである「雇用保険制度」について理解を深めていきたいと思います。
さて、前回のブログでは雇用保険制度における4つの給付の中から、代表的な「求職者給付」と「就職促進給付」にポイントをしぼりご報告させていただきました。今回は残り2つの給付である「教育訓練給付」「雇用継続給付」について触れたいと思います。
<「教育訓練給付」は、働く先の「選択肢」を増やす支援をしている>
・この給付は、就業に必要な技術や資格などの訓練を受けるための手立てとして現金給付を行っています。
・給付内容としては「一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」「教育訓練支援給付金」です。それぞれ給付内容を簡単にご紹介していきます。
[一般教育訓練給付金とは]
・教育訓練の受講日現在で、雇用保険の支給要件期間が3年以上(初めて支給を受けようとする方については1年以上)ある場合で、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講して終了した場合に支給されます。
・支給額は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の20%相当額となります。しかし、その額が10万円を超える場合は給付限度額を10万円とし、4千円を超えない場合は支給が行われません。
[専門実践教育訓練給付金とは]
・2018年1月1日からの専門実践教育訓練給付金の「支給率」「上限額」「支給対象者の要件」が拡大されました。
・以前は教育訓練の受講日現在で雇用保険の支給要件期間が10年以上必要でしたが、現在は支給要件期間が3年以上(初めて支給を受けようとする方については2年以上)ある場合に厚生労働大臣の指定する教育訓練を受講して終了した場合に支給されるようになりました。
・支給額は、教育訓練施設に支払った教育訓練経費の50%相当額となります。しかし、その額が40万円を超える場合は給付限度額を40万円とし、4千円を超えない場合は支給が行われません。
・教育訓練を受講して資格などを取得され、受講修了日の翌日から1年以内に就業された場合は、更に追加として教育訓練経費の20%相当額が支給されます。つまり、教育訓練施設に通い資格などを取得して就職が出来た場合は、教育訓練経費の最大70%が支給されるようになりました。
・この給付は複数回受けることが可能ですが上限額が設定されています。最初の専門実践教育訓練を受講開始した日を起点に、10年経過するまでの間に受講した専門実践教育訓練の教育訓練給付金の合計額は168万円を限度としています。
[教育訓練支援給付とは]
・初めて専門実践教育訓練(通信制・夜間制を除く)を受講する方で、受講開始時に45歳未満であることなど、一定の要件を満たす方が訓練期間中失業状態にある場合に支給されます。
・支給額は、訓練受講中の基本手当の支給が受けられない期間について、基本手当の日額の80%相当額が支給されます。
・この教育訓練支援給付金は、平成34年3月31日までの時限措置となっています。
<「雇用継続給付」は、「働けない理由」に手当をし、働けるきっかけを作ります>
・この給付は高齢者や育児、介護を理由に休業しているかたが働き続けられるようにするための手立てとして現金給付を行っています。
・給付内容としては「高年齢雇用継続給付」「育児休業給付」「介護休業給付」です。それぞれ給付内容を簡単にご紹介していきます。
[高年齢雇用継続給付とは]
高年齢雇用継続給付には、「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」という2つの給付があります。
1、高年齢雇用継続基本給付金
・雇用保険加入期間が5年以上ある被保険者が、60歳以降に失業給付の基本手当を受給することなく、60歳到達時点の賃金に比べて75%未満の賃金で就労している時に、その時点の給料の15%相当額が支給されます。
・60歳時点において雇用保険に加入していた期間が5年に満たない場合は、雇用保険に加入していた期間が5年となった月からこの給付金の支給対象期間となります。支給期間は65歳までになっています。
2、高年齢再就職給付金
・雇用保険加入期間が5年以上ある被保険者が基本手当を受給していたが、支給残り日数が100日以上ある場合、原則として60歳到達時点の賃金に比べて75%未満の賃金で再就職して就労している時に、その時点の給料の15%相当額が支給されます。
・支給期間は基本手当の支給残り日数によって最大2年間支給されます。
[育児休業給付とは]
・雇用保険の一般被保険者が1歳または1歳2ヶ月(支給対象機関の延長に該当する場合は1歳6ヶ月または2歳)未満の子どもを養育するために育児休業を取得した場合、休業開始前の2年間に加入算定月が12ヶ月以上ある方で、下記の2項目を満たす場合に支給されます。
~満たす必要のある2項目~
1、育児休業期間中の1ヶ月ごとに、休業開始前の1ヶ月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
2、育児期間中に就業期間がある場合は、支給単位期間ごとに就業していたと認められる就業日数が10日以下であること。(10日を超える場合にあっては、就業している時間が80時間以下であること)
・支給額は、休業開始時賃金日額×支給日数の67%相当額です。また、育児休業開始から6ヶ月経過後は50%相当額です。
[介護休業給付とは]
・家族を介護するために休業し、介護休業開始日前2年間に雇用保険加入算定月が12ヶ月以上あり、下記の2項目を満たす場合に支給されます。
~満たす必要のある2項目~
1、介護休業期間中の1ヶ月ごとに、休業開始前の1ヶ月当たりの賃金の8割以上の賃金が支払われていないこと。
2、就業している日数が支給単位期間ごとに10日以下であること。
・支給額は、介護休業開始日の前日に離職したものとみなした時の賃金日額×支給日数の67%相当額です。
・支給要件の対象となる「家族」に関しては、一般被保険者の配偶者、父母、子、配偶者の父母、同居して扶養している祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。
・支給要件の対象となる「介護」とは、負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な対応)を必要とする状態にある家族を介護するための休業であることとされています。
・支給期間は、介護休業開始日から最長3か月間となっています。以前に介護休業給付を受けたことがある場合であっても、要介護状態が異なることにより再び取得した介護休業についても介護休業給付金の対象になります。しかし、支給限度には制限がありますので注意が必要です。
さて、前回と今回の2回にわたり、雇用保険制度における4つの給付(「求職者給付」「就職促進給付」「教育訓練給付」「雇用継続給付」)の中身について触れてまいりました。これらの制度を活用するためには、原則として利用を希望する本人の住所を管轄するハローワークへ申請をしていただくことから始まります。自分が少しでも該当しそうな状況にある場合には、お近くのハローワークに足を運んでみてはいかがでしょうか。
この制度は超少子高齢社会いおいて働き手が減少する中、様々な理由において働くことが出来ない方々を支え、定年以降も働けるきっかけ作りを支援しています。
もしも、ご自分の生活の中で「働けないことで苦しい状況」が生まれたとしたら、この制度の存在を思い出してみてください。この制度は働くことを支える手段が多くちりばめられています。制度を上手に活用して、生きやすさ・暮らしやすさの1つにしていただければ幸いです。