「社会保障制度」を身近に感じてみませんか?「生き辛さを支える」社会保障制度を解説します。
皆様こんにちは。今回から数回にわたって、「社会保障制度」という少し堅苦しくてとっつきにくそうなテーマを、ソーシャルワーカーの視点で解説してみたいと思います。社会保障制度を自分たちの暮らしの中で僅かでも身近に感じてもらい、制度を上手に活用して「生き辛さ」を和らげるお力添えが出来れば幸いです。
<「社会保障制度」は、広い意味で「人々の生きるを守りましょう」ということ>
「社会保障制度」という言葉を調べていくと、真っ先に出てくるのが様々な制度の名前だと思います。もちろん制度の詳細は後程ご説明いたしますが、この制度全体を通して言えるのは、人々が「生きる」ということを守っていくための制度であるということです。そして、その守り方を具体的にするために、「どの様な状況の方が生き辛く、それを解決していくことが国として求められているのか」を考えて制度を作って運用しているのです。そのため、生き辛さを改善してもらいたい状況は刻々と変化し、当初設定した制度ではまかないきれない状況が生まれています。
<私たちが感じる「生き辛さ」は、とても「個別的」になっている>
私たちが暮らす中で感じる様々な「生き辛さ」について対応できるように、国は様々な内容を「制度」という形で細分化して保障しようとしてきました。しかし、私たちの生き方はとても多様です。その結果、国は「生き辛さを抱える人はこのようなパターンが多い」「このようなパターンの人はこのくらいの人数が居る」「このようなパターンの生き辛さを支えるために新しい制度を作り、その為の予算はこれくらいだろう」という計算がしにくくなってしまいました。それでも人々の生活を守る手段として、様々な制度の設計と改正を繰り返すことで最低限の守り方を維持してきました。逆を言えば、人々の生き方の多様性が、生き辛さの多様性を生み、その結果社会保障制度もまた複雑さを増しているということに繋がると言えるのです。
<日本の社会保障制度は4つの柱から出来ている>
人々の生き方に多様性があったとしても、生き辛さの根幹になる部分は現在も変わっていないと思います。さて、現在日本の「社会保障制度」は大きく4つの柱から成り立っています。それは「社会保険」「社会福祉」「公的扶助」「公衆衛生及び医療」の4つです。
1つ目の「社会保険」は、年金制度や医療保険制度や介護保険制度などを中心として、私たちの暮らしを支える最も身近な支援と言えます。
2つ目の「社会福祉」は、高齢者福祉制度・障害者福祉制度・児童福祉制度・母子及び寡婦福祉制度を中心に、対象者を状態別に分けて社会保険制度では足りない社会的な支援が必要な方々を支えるようにつくられています。
3つ目の「公的扶助」は、生活保護制度を中心として、生活困窮の状態に応じて最低限度の生活を保障することを目的としており、憲法による日本国民の生きる権利(生存権)を具体化したものです。
4つ目の「公衆衛生及び医療」は市区町村において保健所や保健センターなどの公共施設によって、様々な取り組み(健康診断の実施・感染症の予防対策など)を行い、より広域的な支援を行っています。
社会保障制度の根幹は、このような具体的な制度からも分かるように、誰にでも起り得る「生き辛さ」を支える制度つくりになっています。しかし、社会情勢や人口動態、財政状況により、制度は時には統合したり、時に細分化したり、対応出来る範囲が変わったりしてしまいます。それがこの社会保障制度をより分かりにくく、より私たちに身近な制度だと感じさせないようになってしまうのだと思われます。
次回からは、1つ1つの制度に焦点をしぼり、内容を出来るだけ分かりやすくソーシャルワーカーの視点で解説していきたいと思います。