「生き辛さを支える」ソーシャルワーカーの相談室

自分の気付きと振り返り(30)

 
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現在は医療機関で医療ソーシャルワーカーとして10年以上働いていおります。相談援助職の国家資格である「社会福祉士」の資格を持ち、介護保険制度のプロである「介護支援専門員」の資格も生かし、医療と福祉の両面で、生活すること、生きること、暮らすことのお手伝いを行っています。 中々人に言い辛い「お金にまつわること」を始めとすることや「社会保障制度」の活用の仕方や、「介護サービスのこと」「病院の選び方」に関わるアドバイスが可能です。 また「医師・看護師とのコミュニケーションの取り方」で中々自分の言いたいことが伝わらない一方通行な言われ方・やり取りをした経験はありませんか?医療職種の考え方・言葉の中に何が含まれているのか、紐解くお手伝いも得意です。 様々な公的制度や対人コミュニケーションを円滑にするポイントを探し、暮らしのお手伝いになれる「相談員」としてご活用ください。 また、気軽に趣味の投稿も備忘録として増やしていきます。

日頃の仕事での気付きや、本やメディアなどの言葉で自分に引っかかった事を自分の言葉を追加して、備忘録的に書き留めます。

今回の言葉は「前例を丁寧に作る事で、二例目に繋がる」というものです。

医療の領域でソーシャルワークの仕事をしていると、運ばれた患者が、いわゆる医療資源を積極的に投入しない「社会的入院」になるケースが一定数あります。これは病院組織にとっては、残念ながら歓迎されません。これは、社会保障費が国全体の予算を多く占めており、制度上維持をしていくには国民負担が増加の一途をたどっている事と関係しています。

要するに、医療や福祉という社会保障制度は財源上、より低いコストで、効率化を図る結果を出した所にインセンティブが発生する仕組みに移行しているからです。そしてこれらは年度を重ねるほど加速しており、医療機関で言えば、治療の対象にしていく状況や期間に制限をかけ、早期治療と早期退院、医療から福祉へシフトしている事が顕著になっています。

そのような中、医療機関には日々多くの患者が搬送されてきますが、近年顕著になってきているのが、医療機関に受診したことから様々な問題が分かるという現象です。社会問題になっている「8050問題」「ひきこもり」「無保険」「経済的弱者」「精神疾患の子供と認知症の親」などが、救急搬送をきっかけに分かるという状況なのです。

ソーシャルワーカーにとって、これら社会問題を抱えているケースが多くなっている事は周知の事実ですし、支援の対象です。しかし、医療機関にとっては、「医療の必要性があるかどうか」が全ての判断基準なので、仮に入院したが結果的に医療の必要性が無くなれば即退院です。医療の現場にいるソーシャルワーカーは、これら社会問題が多岐に渡るいわゆる「困難ケース」を対応します。対応の範囲は、搬送された患者のみならず、その家族や家庭に及ぶことが少なくありません。

医療機関にいるソーシャルワーカーは、このような「医療機関にとっては重要視出来ない患者」を、いかにして「暮らしと命が守られる状況を作る重要性」を見つけて組織に提案していけるかが仕事になります。そして、解決に繋がるように組織外のネットワークを駆使して、チームを作り、役割分担を行い、目の前にいるクライアントとその家族と信頼関係を作り、問題と向き合えるように自立支援を進めていきます。

これらソーシャルワーカーの一連の仕事は、医療機関にとっては「厄介事」であり、「面倒な事」であり、「ソーシャルワーカーが関わる時間がかかる事」として目につきます。そして、それらの仕事は、基本的にすべてが組織にとって「はじめてのケース」になり得ます。だからこそ私たちは、今回の言葉である「前例を丁寧に作る事で、二例目に繋がる」を意識しないといけないと思っています。仮に、一時の個人的な「社会正義」のみでソーシャルワーカーが突っ走ってしまうと、組織は付いてきません。そのケースが組織にとって「悪い前例」となれば、最終的に「ソーシャルワーカーが必要なケースは受け入れが出来ない」みたいな極論も生まれてしまいます。それは、クライアントにもソーシャルワーカー自身にも不利益です。

ソーシャルワーカーの仕事ぶりは、結果的に組織にとっても社会的な意義や役割もあるという事、利益の一部にもなっている事をバランスよく見せていくことは、多くの感情労働とクライアントと組織、チームメンバーのアセスメントが必要です。「居ると安心」に繋がるソーシャルワーカーを続けたいですね。

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現在は医療機関で医療ソーシャルワーカーとして10年以上働いていおります。相談援助職の国家資格である「社会福祉士」の資格を持ち、介護保険制度のプロである「介護支援専門員」の資格も生かし、医療と福祉の両面で、生活すること、生きること、暮らすことのお手伝いを行っています。 中々人に言い辛い「お金にまつわること」を始めとすることや「社会保障制度」の活用の仕方や、「介護サービスのこと」「病院の選び方」に関わるアドバイスが可能です。 また「医師・看護師とのコミュニケーションの取り方」で中々自分の言いたいことが伝わらない一方通行な言われ方・やり取りをした経験はありませんか?医療職種の考え方・言葉の中に何が含まれているのか、紐解くお手伝いも得意です。 様々な公的制度や対人コミュニケーションを円滑にするポイントを探し、暮らしのお手伝いになれる「相談員」としてご活用ください。 また、気軽に趣味の投稿も備忘録として増やしていきます。

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