自分の気付きと振り返り(21)

日頃の仕事での気付きや、本やメディアなどの言葉で自分に引っかかった事を自分の言葉を追加して、備忘録的に書き留めます。
今回の言葉は「伝統は知って欲しい、だけど進化の邪魔はしたくない」というものです。
この言葉は、お笑い芸人の方が、漫才の伝統と今後の未来を考えた時に発言をしていた言葉です。どの業界においても、「新人」が常に時代の先端として取り扱われ、メディアで「目立つ存在」として取り上げられます。
現代の世の中の動きや、時代を作る人々は取り上げられて当然と私も思います。一方で、「今までの歴史」を軽んじてしまい、「今の流行りが絶対」だと私は思っていません。何故なら、今の流行りが、今ここで形になった事は、過去の歴史の積み重ねから起こっている事が多いと思っているからです。
これは、対人援助職にも当てはまると感じています。今まで、対人援助職の先輩方は、圧倒的なケースワークの力や、アセスメントの力、面接力、指導者としての力があります。それこそ対人援助職の「歴史」を作った方々ともやり取りをさせていただきました。その時代を知っている私の年代としては、これらの先輩たちの「圧倒的な職人技」に憧れがあります。言うなれば、「生き方としてのソーシャルワーク」を体現している方々の力です。
一方で、私達から下の年代の方々とやり取りをすると、「ビジネスとしてのソーシャルワーク」の感覚が強く、簡単に言ってしまえば「職人技」では無くなってきているのだと感じます。それは、時代の流れでもあるように感じます。しかし、それでは足りない気もしている私がいました。そのような中で、今回取り上げた「伝統は知って欲しい、だけど、進化の邪魔はしたくない」という言葉が今の私にすっと入りました。
ワークライフバランスが求められる昨今、全ての対人援助職の方々が、職業として「職人であれ」とは望めませんし、その考え時代が時代錯誤かもしれません。しかし、職人としてのソーシャルワークが、一定の時代を築き、それこそがソーシャルワーク自体を「専門職」として認知される状況を作っていた事、何よりもクライアントをしっかりと理解して「頼られる存在」にしていたことは紛れもない事実です。
私の年代は、その両方を知る世代です。そして、私自身は、「職人」としての仕事にこだわりがある価値観を持っている人間です。
今後の世の中の流れとして、個人の能力の凄さは薄れ、担い手不足を解消していく中で、システムとして「平均化」された「方法論」が一般化する世の中になると考えます。これが「進化」であるかは、正直今の私には分かりません。それでも、仕事をする上で自分のやれることに限界があるように、世の中の全ての仕事や課題解決に限りがあるのであれば、「ソーシャルワークを無くさない」という方法に価値を置き、時代の移り変わりに併せた価値観に変えていくしかありません。
今の私に出来る事は、ソーシャルワークを、過去のスタンダードと未来スタンダードの両方を否定せずいる事だと思っています。どちらの良い所も悪い所も見えているからこそ、「クライアントに不利益を渡さない未来」に向けて、振り返る事が出来る歴史と実務論としての今と、変遷していく未来の両方を大事に出来たならと思わせてくれる言葉でした。