自分の気付きと振り返り(107)「簡単に分かった気にならずその手に柔らかく握っておく」
日頃の仕事での気付きや、本やメディアなどの言葉で自分の心に留まったもの、自分の振り返りの言葉などを取り上げて、備忘録的に書き留めます。
今回の言葉は「簡単に分かった気にならずその手に柔らかく握っておく」というものです。

最近読み始めた本の中で、言葉を拾っていったらこの言葉にたどり着きました。
今は何でもすぐに「答え」が出る事の方が喜ばれるし、スッキリします。悩んでいる時間が「惜しい」「もったいない」「時間の無駄」とネガティブに捉えられ過ぎるのだと思います。
確かに一面では正しいものだと思いますが、私は体感として、考えてすぐに答えに至らない時は、悩みを手元や自分の棚に置く感覚があります。
このような感覚が自分の中に生まれたきっかけの言葉があります。この言葉は言われた時にスッキリしなかったために、結果的にその言葉が自分で腑に落ちるまで3年以上かかりました。その言葉は私が上司から言われた言葉で、それは「つまらない仕事をしているね」という言葉でした。
業務の流れの報告をしている場面で、上司から突如言われたその言葉に、驚きと苛立ちを感じたことを覚えています。何でその言葉を言われたのか、貶されているようで、でも何となく言い当てられているようで言い返せないその時の私は、自分が納得する言葉の意味を探し、納得できる解釈をあれこれ考えてモヤモヤしていました。
でも見つからない。だから、仕方が無いからこの悩みを手元に置いておく、または棚に置く感覚を作りました。なぜかその言葉は、当時の私の反発心も相まって、消すことや忘れ去ることは出来ませんでした。
上司が移動となり、自分にも後輩が出来て、人を教えるような立場になっていくくらいの時間が過ぎました。そんな時、後輩の仕事ぶりをみて、支援の進め方や対応について、私はなんだか引っかかり、モヤモヤする事が増えました。この後輩の対応の引っかかりの正体を「これさえやっておけば今は問題ではないが、課題が先に見えているのに手を付けないのは仕事をする人間として不誠実や怠慢ではないか?」と私なりに言語化してみました。
その時に、過去の私が上司から言われた「つまらない仕事をしているね」という言葉が手元に戻り、嵐のように過去の自分がよみがえり、何だか救われたような気がしました。同時に、上司への感謝がこみ上げました。当時上司が私に言った言葉の意味がこれなんだと、納得いく解釈を自分で気が付く事が出来ました。
この体験から、私は後輩の指導の中で、すぐに解決できない「ハードル」を意識的に課すことが増えました。その際に私は、「なぜ自分がこのハードルを課されているのかという意味」を話し、手元に悩みを置いたままで良い事を伝えます。また、「このハードルの意味が自分で腑に落ちたら私にも教えて欲しい」という事も伝え、言語化を促すように添えています。
対人援助職の仕事は、正解がある意味ありません。人が生きている分だけ、その人の正解があるので、アプローチは無限です。どのような座組で、どこまで時間を使えるものかも、ケース事にバラバラです。そんな仕事をしていると、支援に絶対の正解は無いのですから、迷いながら確認して進めるくらいが、本来丁度いいのかもしれないなと感じるようになりました。そういう意味で、簡単に答えが出ない方が良いのかもしれません。
耳の痛いアドバイスが胸に刺さり、自分でも早くスッキリしたいのに、痛い所を突かれているから動けない時、他責思考になり過ぎず、その刺さった言葉を手元において、少しそのまま放置したり眺めたりするのも、悪くは無い気がします。当時はモヤモヤしっぱなしでしたが、私は結果的に、手元に置くような姿勢でこそたどり着ける貴重な経験をしました。
スッキリしない負荷はストレスになります。だからこそ「今のモヤモヤも良いことあるよ」と自分に対してエールを送りながら、今回の言葉である「簡単に分かった気にならずその手に柔らかく握っておく」という考え方は大事にして良いのかなと思います。