医療費を抑えられる制度があります。「高額療養費制度」知っていますか?
皆様こんにちは。今回は「高額療養費制度」という制度に関して取り上げていきたいと思います。この制度は、手続きをして該当する方の「医療費」を抑えることが出来るという特徴を持っています。皆様の制度の理解に少しでもお役に立てられたら幸いです。
私たちが暮らしていく中で予期せぬ「ケガ」や「病気」や「事故」は、残念ながら避けにくいものもあります。ドラッグストアなどで薬を買って様子を見ることもあると思いますが、やはり身体が辛い場合は、医療機関に行って「治療を受ける」という選択を取る方が多いと思います。さて、医療機関に受診をした際に「お会計」は必ずありますが、皆様はこの「お会計」について「思ったより高いな」と感じた経験はありませんか?今回お話をさせて頂くのは、保険診療の医療費を抑えていく方法についてです。その中の代表的な制度である高額療養費制度をご紹介いたします。最近では様々なメディアで取り上げられることが多くなってきた制度で、認知度が高くなってきておりますが、改めてその内容をご説明させていただきます。
この高額療養費制度を一言でいえば、「月単位の保険診療でどれだけ高額な治療を行っても、その方の限度額以上は支払わなくて良い」ということです。病院窓口などで医療費をお支払いした際に高額になる場合は、皆様が加入されている公的医療保険者(健康保険組合・協会けんぽの都道府県支部・市町村国保・後期高齢者医療制度・共済組合など)へ高額療養費の支給申請書を提出(または郵送)し、該当する場合にこの制度を受けることが出来ます。会社勤めの方であれば、会社の総務課や経理課などで一括して対応してもらえる場合もあります。手続きの際に医療機関の領収書の添付を求められますので、お支払いした領収書は無くさないように保管しておいてください。
申請を行って該当した場合、窓口で限度額以上に払い過ぎていた医療費が戻ってきます。しかし、ここで注意していただきたいポイントが3つあります。
<ポイント1 限度額の対象は「医療費」のみ>
あくまでも戻ってくる限度額の対象は「医療費」であり、それ以外の食費や居住費、希望によって利用した差額ベッド代や自由診療にかかる費用などは、残念ながら高額療養費の支給対象にはなりません。
<ポイント2 払い戻しに時間がかかる>
限度額を超えて払い過ぎた費用が戻ってくるには、約3か月程度かかることが想定されます。医療と生活にかかるお金を考えることと、治療に専念することの両方を考えることは、容易ではありません。
<ポイント3 払い戻しには期限がある>
高額療養費制度では高額療養費の支給を受けられる有効期限が定められています。有効期限は「診療を受けた月の翌月の初日から2年」となっています。高額な治療を受けて、まだ高額療養費制度の申請をしたことが無い方がおりましたら、支給を受ける権利がある期間かどうか確認した上で、各公的医療保険者に問い合わせてみるのが良いかと思います。
今までご説明した制度は、一旦全ての支払いが終了した後に手続きをすることで払い戻すものですので、「1度窓口でお支払いする治療費を全額用意する必要がある」という欠点があります。公的医療保険の負担割合は1割負担から3割負担まで差はありますが、入院治療となれば基本的にはまとまった金額が必要になってしまいます。治療を受けなければいけない状況となる時は、誰しも予期せず訪れます。さまざまな民間の医療保険があり、皆さまも加入されている方が多いと思いますが、それも手続きに時間がかかる場合や、各保険会社に提出する診断書が書きあがるのには時間がかかることも多いと思います。
そこでまとまった医療費を用意しにくい時に役立つのが、高額療養費制度の1つである「限度額適用認定証」及び「限度額適用・標準負担額減額認定証」です。この2つの証書の効果を一言でいえば、「戻ってくる医療費分を先に差し引いた額で請求書を出す」ということです。ここで少し「限度額適用認定証」と「限度額適用・標準負担額減額認定証」の違いをご説明させていただきます。
~「限度額適用認定証」と「限度額適用・標準負担額減額認定証」の違いについて~
「限度額適用認定証」は、高額療養費制度と同様に限度額以上に払い過ぎていた医療費の中で、戻ってくる分を先に差し引いた額で窓口請求をする証書になります。
一方、「限度額適用・標準負担額減額認定証」は、住民税非課税世帯などの方で限度額適用認定証の手続きをされた際に、医療費の他に入院時の食費や、療養病床など一定の居住費がかかる病床へ入院している方の費用を減免する証書になります。住民税非課税世帯などの方は、治療にかかる医療費の割合が高くなれば暮らしが立ち行かなくなってしまいます。そこで、保険料の未納などが無い場合は、一般的に「限度額適用認定証」(医療費の減免)の手続きをして該当する場合は「標準負担額減額認定証」(食費・居住費の減免)の手続きもセットで行われ、「限度額適用・標準負担額減額認定証」という形の証書が発行されます。
これら2つの証書は、事前に申請手続きを行うことが可能で、申請手続きの流れは高額療養費制度の手続きと同様です。入院治療や外来での高額治療を受ける状況が分かった段階で、是非一度皆様が加入されている公的医療保険者にお問い合わせをしてみてください。
最後に、もっとも注意しなけらば行けないことがあります。それは、必ずしも皆様が全員、説明を致しましたこれらの「高額療養費制度」を使えるとは限らないということです。少しだけこの部分を補足させてください。
~なぜ、高額療養費制度は、申請者全員に適応されないのか?~
申請者全員の医療費を減免出来ない最大の理由は、社会保険制度だからなのです。簡単に言えば、多くの所得があり、国に多くの税金を納めている人は、経済的な余裕があるから減免は受けにくいということです。逆に少ない所得の人は、少ない税金しか納めにくい状況であるから、減免制度がないと「医療」という公的サービスを受けられない人を作ってしまうのです。
社会的な公平性を保ち、私たちがある程度平等に医療サービスを受けられる仕組み作りの中で生まれた制度が「高額療養費制度」です。このため、思っている以上に「この制度に該当しない」「利用が出来ない」という方が増えています。また、超少子高齢社会において社会保障費がどんどん膨らんでいる昨今、更に私たちが納める保険料は高くなり、自己負担も増えてしまうことも容易に予想されます。だからこそ、国の制度を上手に使える知識を得て、自分たちの暮らしをし易くする必要があります。そのお手伝いや制度の理解を一緒に深め、必要なサービスに繋ぐことが出来るのが、「ソーシャルワーカー」だと思います。
ソーシャルワーカーの視点で今回は「高額療養費制度」を解説してみました。これからも皆様の「暮らしやすさ」に繋がる情報をお伝えできるようにしたいと思います。