一人暮らしで急な入院。貯蓄が少ない人ほど「高額療養費貸付制度」は活用できる。

皆様こんにちは。今回私がご説明させていただきますのは「高額療養費貸付制度」という制度です。この制度は、例えば急な治療や入院が決まり、なおかつ限度額適用認定証の手続きも間に合わなかった場合で、まとまった医療費を用意出来ない時に有効な手段となります。
<暮らしていく中で、病気になることを考えて暮らしている人は少ない>
私たちが日々を暮らす上では、急な体調不良や、検査や手術が必要で入院するような「緊急事態」を毎日想定して生きている人は少数派だと思います。中には「今まで大きな病気をしたことが無い」という素晴らしい健康状態の方いらっしゃいます。しかし、先天的な病気や障害により「医療が暮らしの中の一部」になっている方もおりますし、平均寿命が延びている日本において、75歳以上である後期高齢者では、医療機関の受診が無い人の方が少ないほどです。これは「暮らす」という私たちの日常の中で、医療に係るきっかけが年々高くなることを意味しています。
<「自分に何かあっても頼る人が居ない」という境遇になる方は年々増加している>
現在日本における世帯構成は「単独世帯(単身世帯)」が非常に多くなっています。その背景は、超高齢社会かつ出生率低下の状況における世帯構成の変化が原因です。(超少子高齢社会)「二世帯・三世帯」の減少はもちろん、両親と未婚の子供からなる「核家族世帯」の減少もあります。その中で核家族の中から働きに出た子供が単独世帯になる事はもちろんのこと、当然「高齢夫婦世帯」で一方が死別したことによる単独世帯も増加しています。世帯構成の変化は、「自分に何かあっても頼る人が居ない」ということに繋がります。また、世帯構成の変化は、その世帯の所得額にも影響を与えています。
<「単独世帯」は緊急事態が起こると「困窮」に陥りやすい>
世帯において所得がある方が複数いれば、世帯の所得も貯蓄もある程度確保できますが、単独世帯では経済的な余力が少ない場合が多くなります。また、「入院」などの緊急事態がきっかけで、急激に「困窮」な状態に陥りやすくなります。立て直しに必要な経済的・肉体的・社会的・精神的余力が枯渇しやすい状況になりやすいことが要因です。さらに、入院などの場合は「自分が動けない」ことにより、身の回りで必要な手続きや準備をしていくことがタイムリーに出来ない場合が考えられます。なおかつ入院などの急な医療費の出費は、経済的にもその後の生活が苦しくなることが想定され、治療経過や健康状態によっては生活基盤自体が成り立たなくなることも想定されてしまいます。
<私たちは、いつ「患者」となるか分からない。だからこそ制度を上手に活用!>
「高額療養費貸付制度」は、限度額適用認定証の手続きをすることが出来ずに、認定証が交付される前に医療機関から医療費の請求を受けている人や、高額療養費相当額の支払いが困難な人が対象になります。これにより、単独世帯において、自分に何かあっても頼る人が居ない状況に陥ったとしても、病気により事前手続きが間に合わないタイミングだったとしても、今後の暮らしを考えて「医療費」が「生活費」を脅かすことを少しでも軽減するきっかけにしていただきたいと思います。
この制度は、医療費の自己負担額の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込み額の8割から10割相当額を無利子で貸付る制度です。手続きとしては事前に各医療機関の請求事務担当者や受付窓口などで制度の活用をしたい旨を伝え、各公的医療保険者へ申請の手続きを行います。申請の際に添付していく書類としては、「医療機関で発行した医療費請求書」「被保険者証や受給資格者票」「高額医療費貸付金借用書」「高額療養費支給申請書」などが求められます。各公的医療保険者で名称などが若干違いますので、この制度の活用を考えられた際は、早めに各医療保険者へ問い合わせてみて下さい。
暮らしの中の感じる「生き辛さ」は、このような緊急事態による「困窮」の場面で、より実感しやすくなります。本来の社会保障制度は、私たちが暮らす上で感じる生き辛さを改善するための制度であるはずです。生き辛いと感じる様々な生活を、少しでも生きやすく感じられるように、様々な制度を自分に適した所から活用してはいかがでしょうか。